2018年3月19日

 

 

大阪大学大学院医学系研究科 甲状腺腫瘍研究チーム

内分泌代謝内科学講師・阪大病院臨床検査部副部長  高野 徹 様

 

 

                    311甲状腺がん家族の会

                    事務局長 武本泰

                    ℡:080-6718-1717

                    Eメール:311tcfggmail.com

 

 

 

      小児甲状腺がんについて(公開質問)

 

 平素は、被ばくによる県民の健康被害の実態調査やその防止にご尽力賜り、心より敬意を表します。併せまして、高野徹様におかれましては、検討委員会委員として患者の権利と利益を最優先に議論頂けるものと期待申し上げています。

 

 さて、「311甲状腺がん家族の会」は、県民健康調査により甲状腺がんと判明した患者家族が中心となり設立され、会員の大半は、福島県立医科大学で加療中です。当会は、患者の治療および生活の質を高めることができるよう情報交換を行い、家族間の交流で見えてきた様々な課題の解決のために取り組み、「患者の治療および生活の質を高めること」を目的としています。

 

 その上で、当会は小児甲状腺がんに関する高野様のこれまでの論文、HP上での意見発表、県民健康調査検討委員会や甲状腺評価部会でのご発言について注視して参りました。これらを踏まえまして、下記の事項について質問させていただきますので、ご教示いただけますと幸甚です。

 ご多忙のところ誠に恐縮ですが、上記当会メールアドレス宛に御返信くださいますよう、宜しくお願い申し上げます。

 

 

                    記

 

 高野様は第29回および第30回「県民健康調査」検討委員会におきまして、健康調査において発見されている甲状腺がんについて「ほとんどが過剰診断」、「想像するのが恐ろしいくらい過剰診断が起きている」との見解を示され、学校における一斉検診の中止を要求されました。検討委員会後の会見では質問に応え、「過剰診断は何十年後にならないと分からない」と述べておられます。

 また、2018311日のTBS系列番組「サンデーモーニング」では「どんなに小さくても手術」しているなどと、私たちが医師から説明を受けた内容、理解とは異なる発言をされています。

 ご存じのように、健康調査で発見された小児甲状腺がん患者の中には肺転移例が認められ、さらにがんの再発が始まっているケースもあります。

 このような状況の中、学校における検診の中止を主張される高野様の主張内容は、患者側に対する情報提供が十分ではないように思われます。リスボン宣言にありますように、患者には自己決定を行う上で必要な情報を得る権利があります。これらを踏まえた上で、高野様には以下の質問にご回答いただきたく存じます。

 

1.過剰診断というのは「進行しない、生涯無症状のがんを発見すること」 (Welch H.G., et al*. 2010) だと伺っています。これはがんの進行が遅く、余命の短い中高齢者には起こり得るとされていますが、子どもの甲状腺がんはガイドラインにもあるように進行が早く、また余命が長いため状況がまったく異なっています。特に福島の甲状腺検査で発見・手術に至った症例は、実際に執刀に携わっておられる鈴木眞一医師によれば予防的な処置によって手術されたのではなく、サイズが大きく転移・浸潤があるなど悪性度が高いと、ていねいなエコー検査や経過観察などを経たうえで手術が必要だと判断されたと説明されています。また甲状腺がんの経過観察の第一人者隈病院の宮内昭医師も同様に、手術が必要な状態であったことを認めています。

 これらの実際の病状や専門家の見解に反して、高野様が、私たちの家族における甲状腺がんが「進行しない、生涯無症状である」とする根拠を明確にお示しいただきたく存じます。

 

2.ベラルーシでの研究(Demidchik Y.E., et al*. 2006)によれば、治療せず自覚症状が出るようになった小児甲状腺がんでは、肺転移のリスクが倍以上になると報告されています。また、米国の小児甲状腺がんガイドラインでは、肺転移した場合に用いられる放射性ヨード治療には二次発がんや死亡率の増加リスクがあるとされています。これら、がんが進行した場合のリスクに関する情報は患者の意思決定において極めて重要ですが、高野様はそれらには一切触れずに検査の中止を主張されています。これではインフォームドコンセントやリスボン宣言に悖ることになるかと存じます。なぜこれらが進行した場合のリスクに触れないのか、また検査を中止した場合にこれらの事態が生じた場合、高野様はどのように責任を取る用意をお持ちなのか明らかにしていただきたく存じます。

 

3.高野様はインターネット上の記事(http://fukushima.factcheck.site/article/1396)において福島での健康調査がヘルシンキ宣言違反であると述べています。しかし、米国小児甲状腺がんガイドラインでは、放射線被曝歴のある子どもに対して年一回の診療を推奨しているように、この健康調査は単なる研究ではなく、原発事故後の子どもを守るための措置です。また検査にメリットはないと断言されていますが、甲状腺がんの第一人者清水一雄医師は早期発見早期治療の意義を唱えていますし、上述のようにがんが進行した場合には子どもに大きなリスクを負わせることになります。また原発事故があった以上、健康状態をきちんと把握すること自体に安心感があります。高野様はこれらの状況を一切無視していますが、これはリスボン宣言違反ではないのでしょうか。なぜガイドラインや専門家の見解、県民の安心感を無視するのかについて、ご回答願います。

 

4.高野様は、小児甲状腺がんが進行しないというご主張をご自身の「甲状腺がん芽細胞仮説」に従って主張されています。しかし、この「甲状腺がん芽細胞仮説」を唱えているのは世界で高野様のみであり、また実証的な根拠に欠けていると伺いました。どのような仮説であれ主張されるのは自由であると思いますが、現実に転移や再発が生じているがん患者に対して、従来の科学的知見を無視してそのような根拠薄弱な仮説を適用されるのは、医療倫理上の問題はないのでしょうか。仮に高野様の仮説に従い、患者にがんの進行等の不利益が生じた場合、どのように責任を取られるのか明らかにしていただきたく存じます。

 

 以上4点、福島県の子どもおよび現在闘病中の甲状腺がん患者の権利を守るべく、高野様の真摯なご回答をお願いしたいと思います。